決議要件緩和で実現性向上
2026年施行の改正区分所有法で、老朽マンションの修繕・建て替え決議要件が緩和され、長年停滞した案件の実現性が高まる。
実務基盤の整備が必須
法改正の恩恵を受けるには、管理規約・修繕積立金・長期修繕計画の三つの実務基盤を整え、情報開示義務強化に対応する必要がある。
管理不全専有部分への介入
新設された管理不全専有部分管理制度により、管理組合は裁判所手続きを経て、管理を怠る区分所有者の専有部分に介入可能となる。
はじめに
区分所有法の改正(令和7年法律第47号)は、執筆時点の情報では2026年(令和8年)4月1日に施行されており、マンションやビルの管理・修繕・建て替えに関わるルールが根本から変わっている。結論から言えば、決議要件の緩和と管理組合権限の拡大が今回の改正の核心であり、長年「動かせなかった」修繕・建て替え案件が実現しやすくなる一方、管理組合側には情報開示や計画策定の義務が重くなる。
塗装・修繕の現場で35年以上向き合ってきた立場から言うと、法改正の恩恵を受けられるかどうかは、改正内容を「知っている」だけでなく、管理規約・修繕積立金・長期修繕計画という三つの実務基盤が整っているかどうかで決まる。条文を読んでも現場に落とし込めなければ意味がない。
この記事で分かること
- 2026年施行の区分所有法改正が生まれた背景と施行スケジュール
- 決議要件の緩和・管理組合権限の拡大が修繕計画に与える具体的な変化
- 新旧対照で見る修繕積立金・建て替え決議・情報開示義務の変更点
- オーナー・管理組合が今すぐ着手すべき実務上の課題と対応の優先順位
- 条文PDFの入手先と、専門家への相談が必要な判断基準
区分所有法改正の背景と改正時期——2026年施行で何が動くのか
改正の背景にある老朽化マンション問題と管理組合の機能不全
日本の分譲マンションストックは、執筆時点の国土交通省の公表資料によれば、築40年超の物件が全体の約2割を超え、今後10〜20年でさらに急増することが見込まれている。問題は建物の物理的な老朽化だけではない。区分所有者の高齢化・相続・投資目的での所有増加が重なり、管理組合が機能しなくなるケースが各地で顕在化してきた。
具体的には、所在不明の区分所有者が増えて総会の定足数を満たせない、修繕積立金の不足で大規模修繕が先送りになる、建て替えの合意形成が事実上不可能——こうした状況が、現行法の「全員合意に近い高いハードル」によって固定されてきた。
現場の視点で言えば、外壁の剥落リスクや防水の限界を診断で数値化しても、「決議が取れないから工事できない」という壁に何度もぶつかってきた。法的なルールが現場の実態に追いついていなかった、というのが正直なところだ。
2026年施行までのスケジュールと準備期間
改正区分所有法(令和7年法律第47号)は国会で成立し、令和8年(2026年)4月1日を施行日としている(執筆時点・公式の最新情報を確認のこと)。施行日までの準備期間は、既存マンションの管理規約を改正法に合わせて見直す猶予として設けられているが、総会での規約改定には区分所有者の集会招集・議案作成・承認という手順が必要で、1回の総会で完結しないケースも多い。
管理組合が今動くべき理由はここにある。施行後に「対応が必要と気づいた」では、次の定期総会まで半年以上待つことになる。施行前に規約の現状確認と改定案の骨子を作っておくことが、管理組合にとっての現実的な準備だ。
国土交通省が示す改正の主要テーマ
国土交通省が公表している改正の概要資料(公式ページで最新版を確認)によれば、今回の改正は大きく三つのテーマで構成されている。
| テーマ | 主な内容 |
|---|---|
| 建替え・再生の円滑化 | 老朽・危険マンションの建替え決議要件の緩和 |
| 集会・決議の円滑化 | 出席者多数決・定足数の明確化など |
| 管理不全への対応 | 管理不全専有部分管理制度の新設 |
この三つは独立した制度変更ではなく、「老朽化した建物を動かせるようにする」という一本の目的でつながっている。修繕を先送りにして建物が劣化し、管理組合が機能不全に陥り、最終的に建て替えも再生もできなくなる——その悪循環を断ち切るための法的な手当てと理解するのが正確だ。

マンション管理規約は、建物の維持管理から区分所有者の権利義務まで、マンション運営の根幹を定める文書だ。区分所有法の改正(2026年4月施行予定・執筆時点)を筆頭に、標準管理規約の改定が相次ぐ中、手元の規約が現行法に…
改正の中核——決議要件と管理組合権限の拡大
大規模修繕に必要な決議要件の緩和
区分所有法上、通常の管理行為は区分所有者および議決権の各過半数で決議できる。大規模修繕は「共用部分の変更」に当たる場合、従来は区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成が必要だった(ただし規約で過半数まで緩和可能)。
今回の改正で注目されるのは、建て替え・再生決議の要件だ。耐震・防火・外壁剥落などの危険性が認められる老朽マンションについては、所在不明者等を除いた賛成割合が4分の3(3/4)に緩和される方向で整理されている(執筆時点の公表情報による・公式で確認のこと)。従来の5分の4(4/5)から引き下げることで、長年合意形成が取れなかった案件に現実的な出口を与える。
ただし「緩和された」からといって自動的に決議が通るわけではない。所在不明者の除外手続きには裁判所関与が必要になるケースがあり、その手続きコストと時間を見込んだ上で計画を立てる必要がある。
管理組合が単独で対応できる範囲の拡張
改正で新設された「管理不全専有部分管理制度」は、管理組合の権限を専有部分にまで及ぼす点で画期的だ。ゴミの放置・水漏れの放置など、区分所有者が自室の管理を怠り、他の住民や建物全体に影響が出ている場合、裁判所の手続きを経て管理組合等が当該専有部分の管理・処分を行えるようになる。
従来は「専有部分には手が出せない」という壁があり、管理組合が共用部分をいくら適切に維持しても、一部の区分所有者の不作為が建物全体の劣化を招くことがあった。防水やシーリングの劣化が専有部分からの水漏れで加速するケースは、修繕現場でよく見かける。この制度により、管理組合が法的な根拠を持って介入できる場面が生まれる。
区分所有者の議決権と集会決議の変更点
集会決議の円滑化として、出席者の多数決による決議方法の導入と定足数の明確化が盛り込まれている。これは「総会を開いても定足数に届かず何も決められない」という管理組合の実務上の行き詰まりに対する直接的な手当てだ。
区分所有者の議決権については、所在不明者・連絡不能者を一定の手続きを経て議決権行使から除外できる仕組みが整備される。これにより、投資目的で購入後に管理組合と関わらなくなったオーナーや、相続で取得したものの連絡が取れない所有者が「拒否権」として機能する状況を解消できる。
新旧対照で見える修繕計画への影響
修繕積立金の徴収ルールと計画策定の義務化
現行法では修繕積立金の積み立てについて、マンション管理適正化法に基づく指針はあるものの、計画策定や積立額の最低水準に法的拘束力を持たせる仕組みは弱かった。今回の改正に連動して、長期修繕計画の策定・見直しと修繕積立金の適正な積み立てを管理組合に求める方向が強化されている(国土交通省の関連通知・ガイドラインを公式で確認のこと)。
修繕積立金の不足は、大規模修繕の先送りを生む最大の原因の一つだ。外壁塗装・防水・給排水管更新などを適切なタイミングで実施できないまま放置すると、劣化が複合的に進んで修繕費用が跳ね上がる。長期修繕計画と積立金の連動管理が、法的にも実務的にも管理組合の必須業務になる流れは、今回の改正で加速する。
建て替え決議の要件変更と実現性の向上
従来の建て替え決議は区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要で、これが事実上の「壁」だった。一人でも反対すれば建て替えが止まるに等しい状況が続いてきた。
改正後は、耐震・防火・外壁剥落等の危険性が認められる老朽マンションについて、所在不明者等を除外した上で4分の3の賛成で決議できる仕組みが導入される(執筆時点の公表情報・公式で確認のこと)。これは、建て替えの「実現性」という観点で実質的に大きな変化だ。
ただし、建て替えに踏み切る前に大規模修繕で延命できる物件も多い。建て替えと修繕の判断は、建物の残存耐用年数・修繕費用の累積・容積率の活用余地・地価動向など複数の要素を比較した上で行う必要があり、法的要件が緩和されたからといって即座に建て替えが最適解になるわけではない。
管理組合の報告・情報開示義務の強化
改正区分所有法および関連する標準管理規約の改訂では、管理組合の情報開示義務が強化される。総会招集通知のルール変更、区分所有者間の協力義務の明確化、管理状況の報告義務などが盛り込まれる方向だ。
オーナー・管理組合にとって実務上の影響が大きいのは、管理状況の「見える化」が求められる点だ。修繕積立金の残高・長期修繕計画の内容・過去の修繕履歴などを区分所有者が確認できる体制を整えることは、今後の管理組合運営の基本になる。これは同時に、物件の資産価値評価にも直結する。管理状況が透明な物件は売却・融資の場面でも有利に働く。
お電話で相談 : 047-401-0903平日 9:00〜17:00 / その場で最適なご案内
改正がオーナーと管理組合に与える実務上の課題
既存マンションの規約改定と総会での承認手続き
法改正があっても、管理組合が動かなければ現場は変わらない。既存マンションの管理規約が改正法の内容と整合しているかを確認し、必要に応じて規約を改定する作業が発生する。
規約改定には区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成が必要(特別決議)。総会の招集通知は規約で定めた期間(通常2週間前)に発送しなければならず、議案書の作成・説明資料の準備・委任状の回収など、実務的な準備量は相当になる。管理会社任せにせず、管理組合の理事会が主体的に内容を把握して進める体制が求められる。
一つ注意が必要なのは、規約の改定内容が「改正法に合わせた最低限の修正」なのか「この機会に管理体制全体を見直す包括的な改定」なのかを、事前に方針として決めておくことだ。場当たり的な部分改定を繰り返すと、規約全体の整合性が崩れる。
改正対応に伴う管理会社との契約見直し
管理会社との管理委託契約は、改正法の施行に伴って見直しが必要になる箇所が生じる可能性がある。特に、管理不全専有部分管理制度への対応・集会運営のルール変更・情報開示に関する事務作業の増加は、現行の委託業務の範囲外になるケースがある。
管理会社から「改正対応のための追加費用が発生する」と言われた場合、その内容が法改正で本当に必要になる業務なのか、それとも既存の業務範囲で対応できるものなのかを、管理組合側が判断できる知識を持っておく必要がある。管理会社の言いなりにならない判断力が、今まで以上に管理組合に求められる。
管理会社を変更・見直すタイミングとして、法改正の施行前後は一つの節目になる。複数社から見積もりを取り、業務範囲と費用の透明性を比較する機会として活用できる。
小規模物件と大規模物件での対応の違い
区分所有法の改正は、戸数の多い大規模マンションと、10戸以下の小規模物件では実務上の影響の重さが異なる。
大規模マンション(50戸以上)の場合、管理組合の組織体制がある程度整っていることが多く、管理会社との協力体制のもとで対応を進めやすい。一方、議決権の分散が大きく、所在不明者の割合も高くなりやすいため、所在不明者除外手続きの活用が現実的な選択肢になる。
小規模物件(10〜20戸程度)では、管理組合の理事を区分所有者が持ち回りで担うケースが多く、法的な手続きや規約改定の知識が不足しがちだ。弁護士・マンション管理士・一級建築士などの専門家に個別相談する必要性が、大規模物件より高い。
一棟アパート・小規模ビルのオーナーが単独所有している場合は区分所有法の適用外だが、区分所有の形態を取っている物件であれば規模に関わらず今回の改正の対象になる点は押さえておきたい。
新旧条文の具体的な読み比べ——条文PDFで確認すべき点
条文の全文入手先と参照の仕方
改正区分所有法の条文全文および新旧対照表は、法務省の改正法ページと国土交通省のマンション関係法令ページで公式PDFとして公開されている(執筆時点・URLは変更される可能性があるため各省庁の公式サイトから直接確認のこと)。
新旧対照表のPDFは、左列に「改正前(旧)」、右列に「改正後(新)」の条文が並ぶ形式が一般的で、どの条項がどう変わったかを条文レベルで確認できる。ただし、条文そのものを読んでも意味が取りにくい箇所は多い。国土交通省が別途公開している「改正内容のポイント(パンフレット形式)」を先に読んで全体像を把握してから、具体的に関係する条項を条文で確認する、という順序が実用的だ。
標準管理規約の改訂版も国土交通省から公表されており、自分のマンションの管理規約と並べて読むことで、どこを改定すべきかが明確になる。
自分の物件に関わる条項の特定方法
全条文を読み込む必要はない。まず自分の物件の状況を以下の観点で整理してから、関係する条項に絞って読む方が効率的だ。
- 建て替えや大規模修繕の決議を近く行う予定があるか
- 管理不全状態の専有部分(ゴミ屋敷・水漏れ放置等)が存在するか
- 所在不明・連絡不能の区分所有者が複数いるか
- 修繕積立金の積立額が長期修繕計画と乖離していないか
- 管理規約の最終改定が10年以上前か
これらに一つでも該当するなら、対応する改正条項が直接関係してくる。特に「建て替え・再生決議」と「管理不全専有部分管理制度」は条文の変化が大きく、旧条文との比較で読む価値が高い。
専門家への相談が必要な判断基準
条文の解釈・規約改定の文案作成・所在不明者除外手続きなど、法的判断が必要な場面ではマンション管理士・弁護士・司法書士への相談が現実的だ。
相談が必要と判断すべき基準を整理すると:
- 規約改定の議案を自分たちで作成しようとして条文の意味が取れない
- 所在不明の区分所有者への対応を検討している
- 建て替え・大規模修繕の決議を2〜3年以内に行う予定がある
- 管理不全専有部分への対応を管理組合として検討している
- 管理会社から提示された改正対応費用の妥当性を判断できない
建物の物理的な劣化診断・修繕計画の策定については、一級建築士・建築診断士が窓口になる。法的な手続きと建物の技術的な判断は専門家が異なるため、両方の相談先を持っておくことが、管理組合として機能するための基盤になる。
建物価値向上ナビのような、建物の劣化を数値で可視化し修繕計画を経営判断の材料として整理する支援を行う事業者を活用することも、管理組合やオーナーが「感覚」ではなく「根拠」で意思決定するための一つの選択肢だ。大規模修繕の施工事例はこちら
まとめ
区分所有法改正(2026年4月施行)の本質は、老朽化したマンション・ビルを「動かせる」法的環境を整えることにある。決議要件の緩和・管理不全専有部分管理制度の新設・集会決議の円滑化という三つの柱は、いずれも管理組合が実際に機能するための障壁を取り除く方向で設計されている。
ただし、法改正は「できる」ようにするだけで、「やる」かどうかは管理組合次第だ。修繕積立金の適正化・長期修繕計画の更新・管理規約の改定という実務の準備なしに、改正の恩恵は受けられない。
塗装・修繕の現場で35年以上向き合ってきた経験から言えば、建物の劣化は待ってくれない。法的な決議ができる環境が整ったとき、すでに修繕計画と積立金の準備が整っている管理組合だけが、その仕組みを実際に使える。改正を「知識」で終わらせず、自分の物件の現状確認と実務の準備につなげることが、今オーナー・管理組合に求められている行動だ。
建物の熱劣化リスクや防水残耐用年数を数値で把握し、5〜10年の修繕支出をシミュレーションしておくことが、法改正後の意思決定を経営判断として行うための土台になる。
よくある質問
Q. 区分所有法改正で、大規模修繕の決議はどう変わりますか?
通常の大規模修繕(共用部分の変更)に関する決議要件は、改正前と基本的な枠組みは変わらない。今回の改正で大きく変わるのは建て替え・再生決議の要件で、耐震・防火・外壁剥落などの危険性が認められる老朽マンションについて、所在不明者等を除いた賛成割合が従来の5分の4から4分の3に緩和される(執筆時点・公式で確認のこと)。集会の定足数や決議方法の明確化により、総会が開けずに何も決まらないという状況も改善される方向だ。
Q. 管理不全専有部分管理制度とは何ですか?
区分所有者が自室(専有部分)の管理を怠り、ゴミの放置・水漏れの放置など他の区分所有者や建物全体に悪影響を与えている場合に、裁判所の手続きを通じて管理組合等が当該専有部分の管理・処分を行える制度。従来は専有部分に管理組合が介入する法的根拠がなく、共用部分の修繕に影響が出ても手が打てないケースがあった。この制度により、管理組合の権限が専有部分にまで及ぶ場面が生まれる。
Q. 区分所有法改正の新旧対照表はどこで入手できますか?
法務省の改正法ページおよび国土交通省のマンション関係法令ページで、公式PDFとして公開されている(執筆時点・各省庁の公式サイトから直接確認のこと)。条文全文の新旧対照表に加え、国土交通省はポイントをまとめたパンフレット形式の資料も公表しており、条文を読む前にパンフレットで全体像を把握してから関係条項を確認する順序が実用的だ。
Q. 管理規約の改定は施行前に終わらせる必要がありますか?
法律上、施行日(2026年4月1日)時点で規約の改定が完了していなければならないという一律の期限があるわけではないが、施行後に改正法と整合しない規約のまま運営を続けることはリスクになる。規約改定には特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成)と総会手続きが必要なため、施行前に改定案を準備し、施行後の最初の定期総会で承認を得るスケジュールが現実的な対応だ。
Q. 小規模マンション(10戸前後)でも今回の改正は関係しますか?
区分所有法は戸数に関係なく区分所有の形態を取る建物すべてに適用されるため、10戸前後の小規模物件も対象になる。小規模物件は管理組合の体制が薄く、法的手続きや規約改定の対応が難しいケースが多い。マンション管理士や弁護士への個別相談を早めに行い、自分の物件に関係する条項を特定してから対応を進めることを勧める。
本記事はAI支援のもと編集部が作成 ・ 校閲しています 。
最新の情報については各公式サイト等をご確認ください 。
お電話で相談 : 047-401-0903平日 9:00〜17:00 / その場で最適なご案内
最終更新 : 2026.08.20



