規約改正の判断と時期
2026年改正規約への見直しは強制ではないが、2026年度中には方針を決め、特別決議要件変更や国内管理人制度新設などに対応すべきだ。
特別決議要件の緩和
2026年改正で特別決議要件が緩和され、裁判所認定により所在不明者を分母から除外でき、大規模修繕等の決議が容易になる。
修繕積立金の規約記載
修繕積立金の額を規約本体に固定すると、改定のたびに特別決議が必要なため、普通決議で変更できる形が推奨される。
はじめに
2026年4月、改正区分所有法の施行に合わせて国土交通省がマンション標準管理規約を改定した。結論から言えば、既存の管理規約を2026年改正版に合わせて見直すかどうかは、各管理組合が自ら判断・決議する必要があり、法律上の強制期限はない。ただし、改正内容を反映しないまま放置した場合、総会決議の有効性に疑義が生じるリスクや、売却・融資時の審査への影響が現実的な問題として浮上してくる。
この記事では、2026年改正の具体的な変更点から、既存規約のどこを見直すべきか、手続きの進め方、修繕計画への影響、そして対応を後回しにした場合のリスクまでを整理する。
この記事で分かること
- 2026年改正の核心——特別決議要件の変更と国内管理人制度の新設
- 既存規約で問題が生じやすい箇所と優先度の判断軸
- 規約改正に必要な総会決議の要件と手続きフロー
- 改正が修繕積立金・長期修繕計画の見直しに波及する理由
- 対応遅延が売却・融資・紛争時に与える具体的な支障
2026年改正の背景と対象範囲——国土交通省の改正ポイントを押さえる
前回改正からの経過と、今回改正が求められた理由
マンション標準管理規約(以下「標準管理規約」)は、国土交通省が管理組合向けに示すひな形であり、法的拘束力を持つ法令そのものではない。各マンションの管理規約は標準管理規約を参考に作られているが、作成時期によって内容の古さに大きな差がある。
前回の大きな改正は2016年(平成28年)で、民泊対応や役員資格の緩和、コミュニティ条項の削除などが盛り込まれた。それ以降、分譲マンションの高経年化・居住者の高齢化・所有者の海外居住増加・管理不全マンションの社会問題化が進み、法制度の見直しが避けられなくなった。
2024年に区分所有法の改正法が成立し、2026年4月に施行された。この法改正を受けて、国土交通省は標準管理規約を改定した。法改正が先にあり、標準管理規約の改定はその実務的な運用を示すために後を追う形で公表されている構図だ。
2026年改正で変わる主要な項目
今回の改正で実務に影響が大きい変更点を整理する。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2026年版) |
|---|---|---|
| 特別決議の要件 | 区分所有者数と議決権の各3/4以上 | 出席者の議決権の3/4以上(所在不明者を除外可) |
| 総会招集通知の期限 | 開催日の2週間前まで | 原則1週間前まで(規約で延長可) |
| 所在不明者の扱い | 分母に含まれる | 裁判所の認定を経て分母から除外可 |
| 国内管理人制度 | 規定なし | 海外在住所有者等に国内連絡窓口の選任を義務化可 |
| 喫煙ルール | コメントに記載なし | 受動喫煙防止のルール整備をコメントで明記 |
| 役員の職務代行 | 明確な規定なし | 理事の家族・親族による理事会出席の考え方を整理 |
特別決議の変更は実務上の影響が最も大きい。従来は「所在不明で連絡がとれない所有者」も分母に含まれるため、大規模修繕の建替え決議などで必要数を満たせないケースがあった。改正後は裁判所の認定を経て所在不明者を分母から除外できるため、長年の懸案が制度として解消された。ただし「裁判所の認定」という手続きが必要な点は、実際の運用ではそれなりの時間と費用を要する。
改正が適用される管理規約の範囲
標準管理規約の改定は、あくまでひな形の更新であり、既存の管理規約が自動的に書き換わるわけではない。対象は単棟型・団地型・複合用途型の3種類すべてで、それぞれに対応する改定版が公表されている(執筆時点での情報。国土交通省の公式ページで最新版を確認されたい)。
既存の管理規約を改正版に合わせるかどうかは、各管理組合の総会決議による。法律上の強制ではないが、区分所有法の改正内容(特別決議要件の変更など)は法律として直接適用されるため、規約がひな形の旧版のままでも、法律の規定は上位として適用される。規約と法律の間に矛盾が生じたままになると、実務判断が混乱する原因になる。

区分所有法の改正(令和7年法律第47号)は、執筆時点の情報では2026年(令和8年)4月1日に施行されており、マンションやビルの管理・修繕・建て替えに関わるルールが根本から変わっている。結論から言えば、==決議要件…
既存の管理規約を見直すべき項目——現在の規約で問題が生じやすい箇所
防災・防犯・セキュリティ関連の規定の不備
2016年以前に作成された管理規約では、防犯カメラの設置・録画データの管理・オートロックの運用ルールなどが明文化されていないケースが多い。当時は設備として存在していなかったか、共用部の「附属施設」として曖昧に処理されていた。
防犯カメラの録画データは個人情報保護法の観点から取り扱いルールを明確にする必要があり、誰が閲覧できるか・保存期間はどれくらいか・警察等への提供条件はどうするかを規約またはその細則で定めておかないと、トラブル時に管理組合が対応の根拠を持てない。
宅配ボックスの設置や外部業者の入館ルール(清掃・工事業者の管理)なども、古い規約では想定されていない場合がある。これらは規約本体ではなく使用細則のレベルで整備することが多いが、使用細則の変更は普通決議(過半数)で対応できるため、まず優先して手を付けやすい箇所だ。
修繕積立金と長期修繕計画の記載方法
修繕積立金に関する規定は、2026年改正版の標準管理規約でも見直しが入っている。問題になりやすいのは、「修繕積立金の額」を規約本体に固定値で書いてしまっているケースだ。
額を規約本体に記載すると、積立金の改定のたびに規約改正(特別決議)が必要になる。標準管理規約では、額の設定は総会の普通決議で変更できる形にすることを推奨している。規約本体には「管理組合は長期修繕計画に基づき修繕積立金を積み立てる」という原則を置き、具体的な額は別途決議で定める構造が望ましい。
長期修繕計画については、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(執筆時点での公式版を参照)が2021年に改定されており、計画期間の目安や費用の算定方法が更新されている。この更新を踏まえた修繕計画になっているかどうかも、あわせて確認が必要だ。
高齢化・共有部の利用ルール変更への対応
居住者の高齢化が進むと、共用部の利用に関するルールが現実と合わなくなってくる。車椅子での移動を前提とした共用廊下の使い方、駐車場の優先ルール(バリアフリー対応区画の設定)、集会室の福祉目的での利用などが典型例だ。
2026年改正版の標準管理規約では、役員の職務代行(家族・親族による理事会出席)の考え方が整理されており、高齢・病気等で理事が出席困難な場合の実務的な対応が示された。これは管理組合の運営実態と規約の乖離を縮める改正だが、既存規約に同様の規定がなければ、実際に問題が起きてから判断に迷うことになる。
喫煙ルールも見直しが求められる箇所だ。改正版のコメントでは受動喫煙防止に向けたルール整備が明記された。共用部での喫煙禁止を明文化していない規約では、専用使用部分(バルコニー)での喫煙をめぐるトラブルが発生しやすく、現在も管理組合の悩みの種になっている。

マンション管理規約は、建物の維持管理から区分所有者の権利義務まで、マンション運営の根幹を定める文書だ。区分所有法の改正(2026年4月施行予定・執筆時点)を筆頭に、標準管理規約の改定が相次ぐ中、手元の規約が現行法に…
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改正規約への切り替え時期と手続き——遅れると起きるリスク
改正規約の施行日と経過措置の期限
改正区分所有法は2026年4月に施行されており、法律の規定は施行日から直接適用される。一方、標準管理規約の改定はひな形の更新であり、既存の管理規約を改正版に切り替える「期限」は法律上存在しない。
ただし、この「期限がない」という事実を「急がなくていい」と読み違えるのは危険だ。区分所有法の改正によって、旧規約の特定の条文が法律の規定と矛盾・抵触する状態になっている場合、その条文は実質的に無効または適用不能になる可能性がある。規約と法律が食い違ったまま総会を運営すると、後から決議の有効性を争われるリスクが生まれる。
実務的には、2026年度中(遅くとも2027年の定期総会まで)に規約改正の方針を確認し、改正案を作成して総会に諮るスケジュールが現実的だ。
総会決議が必要な場合と不要な場合の判断基準
管理規約の改正には特別決議(区分所有者数および議決権の各3/4以上の賛成)が必要だ(区分所有法31条)。一方、使用細則の改定は普通決議(過半数)で対応できる。
この違いを整理すると、対応の優先順位が見えてくる。
- 特別決議が必要な変更:規約本体の条文改正(決議要件・修繕積立金の徴収根拠・専有部分の範囲・役員資格など)
- 普通決議で対応できる変更:使用細則の新設・改定(防犯カメラ運用ルール・駐車場使用基準・ペット飼育細則など)
- 理事会決議で対応できる範囲:運用上の手続き(通知方法・書類様式など)
特別決議は要件が高いため、改正案を一度の総会で通すには事前の合意形成が不可欠だ。区分所有者への説明会を開く、改正案を総会招集通知と一緒に配布して事前に読んでもらう、といった準備なしに当日採決だけ行っても、賛成数が集まらないケースは多い。
改正手続きに必要な書類と承認フロー
規約改正の標準的なフローは以下の通りだ。
- 管理組合理事会で改正の必要性を確認・改正案の素案作成
- 管理会社または専門家(マンション管理士・弁護士)による改正案のレビュー
- 区分所有者への改正案の事前配布と説明会の実施
- 総会招集通知の発送(改正案を添付・開催日の原則1週間前まで)
- 総会での審議・特別決議による承認
- 改正後の規約の全区分所有者への配布・管理会社への提出
特に注意が必要なのはステップ4の招集通知だ。2026年改正で招集通知の期限が「2週間前から原則1週間前」に変更されたが、規約で「2週間前」と定めている場合は規約の規定が優先される。規約改正前に旧規約の招集通知期限で総会を運営することになるため、改正前後の期間は混乱が生じやすい。
改正に伴う修繕計画の再検討——資産価値と修繕費用の関係性
標準規約改正で修繕積立金の算定方法が変わる理由
修繕積立金の積立額が不足しているマンションは全国的に多い。国土交通省の調査(執筆時点での公式統計を参照)では、修繕積立金の平均額が長期修繕計画上の必要額を下回っているマンションが相当数存在することが指摘されている。
2026年改正版の標準管理規約では、修繕積立金の積立方式について「段階増額積立方式」から「均等積立方式」への移行を推奨する方向性が示されている(執筆時点での内容。国土交通省の公式資料で最新の記述を確認されたい)。段階増額方式は当初の負担を抑えられるが、将来の増額に組合員の合意が得られなかった場合に資金不足に陥るリスクが構造的に高い。均等積立方式は当初から一定額を積み立てるため、長期的な資金計画の安定性が高い。
この方針転換が規約や計画に反映されていない管理組合では、将来の大規模修繕に向けた資金が計画通りに積み上がらない可能性がある。
既存の修繕計画が改正で不足する可能性
大規模修繕工事の費用は、建物の規模・仕様・劣化状況によって大きく異なる。一般的に、1回目の大規模修繕(築12〜15年目)よりも2回目(築25〜30年目)の方が工事範囲が広がり、費用が増加する傾向がある。
現在の長期修繕計画が2010年代前半に作成されたままであれば、その後の建築資材費・人件費の上昇を反映していない可能性が高い。建築コストは直近数年で大幅に上昇しており、10年前の計画をそのまま使い続けると、実際の工事費が計画値を大幅に上回るケースが出てくる。
塗装工事の現場では、足場・材料・人件費のすべてが上昇しており、10年前の見積もり感覚で修繕費を見ていると実態との乖離が顕著になっている。修繕計画の金額が古い単価に基づいていないかどうかは、計画を作成した時期と現在の市況を比較することで確認できる。
大規模修繕の計画立案に改正規約が影響する場面
改正規約が大規模修繕の計画立案に直接影響する場面は、主に以下の3つだ。
- 工事業者の選定決議:大規模修繕の発注は普通決議で行えるが、修繕積立金の取り崩しや一時金の徴収が伴う場合は規約の定めに従う必要がある。規約に取り崩しの手続きが明確に定められていないと、業者選定後に手続きの正当性を問われる可能性がある。
- 専有部分への立入り:外壁・防水工事では、バルコニーや専有部分への立入りが必要になる場合がある。規約に立入り根拠と手続きが定められているかどうかで、所有者から拒否された際の対応が変わる。
- 所在不明所有者の扱い:大規模修繕の工事期間中に連絡がとれない所有者がいると、バルコニーへの立入り同意が得られないケースが発生する。改正規約の所在不明者対応を整備しておくことで、こうした場面での対応根拠ができる。
大規模修繕を「感覚」ではなく経営判断として進めるためには、規約・計画・資金の三つが整合していることが前提になる。大規模修繕の施工事例と判断基準を参考に、規約改正と修繕計画の見直しをセットで進めることを勧める。
改正対応を後回しにした場合の現実——対応遅延で生じる法的・財務的な問題
規約改正未対応のまま大規模修繕を進めた場合の支障
規約が2026年改正前のままでも、大規模修繕を進めること自体は可能だ。ただし、具体的な場面で支障が出る。
最も起きやすいのは、特別決議の有効性をめぐるトラブルだ。改正区分所有法では特別決議の要件が変わったが、旧規約に「区分所有者数および議決権の各3/4以上」という旧要件が残っている場合、どちらの基準で決議を行うべきかが曖昧になる。法律の規定が上位に立つため法的には改正後の要件が適用されるが、規約と食い違っていることで反対派の組合員から「手続きが不正」と主張される口実を与えかねない。
工事の施工業者側から見ても、管理組合の規約が整備されていない案件は、発注の正当性確認に時間がかかる。特に金融機関から融資を受けて修繕費を賄う場合、規約の内容が審査対象になる。
売却・融資時に改正未対応が与える影響
マンションの区分所有権を売却する際、買主側の金融機関は管理規約の内容を審査する。管理規約が標準管理規約の旧版のままで、法律との乖離が明確な場合、審査が通りにくくなるケースがある。
特に影響が出やすいのは、修繕積立金の積立状況と規約の記載内容が一致していない場合だ。規約に修繕積立金の徴収根拠が不明確なまま積み立てを続けていると、売買時の重要事項説明書の記載内容に問題が生じる可能性がある。
不動産仲介の実務では、管理規約の最終改正年が古いことを理由に「管理が適切に行われているか」を疑問視する買主が増えている。2016年改正版すら反映されていない規約のままでは、資産価値の評価に影響が出る場面が増えてくる。
紛争予防の観点から改正対応が必要な理由
管理組合内の紛争の多くは、「規約に書いていない」「規約の解釈が人によって異なる」という状況から発生する。喫煙トラブル・ペット問題・専有部分の改造・民泊利用などは、規約の記載が曖昧なほど紛争に発展しやすい。
2026年改正版の標準管理規約では、こうした現代的なトラブルへの対応がコメントや条文レベルで整理されている。この整理を自分たちの規約に取り込んでおくことで、紛争が起きたときの判断基準が明確になり、管理組合の対応コストが下がる。
逆に言えば、改正対応を後回しにすることは「規約の空白地帯」を温存することだ。管理組合の理事が変わるたびに「前任者はこうしていた」「規約には書いていないが慣例では」という属人的な運営になると、組合員からの信頼が失われ、大規模修繕の合意形成にも支障をきたす。
建物の劣化は数値で見えるが、管理体制の劣化は表面に出にくい。規約の整備は建物の修繕と同じく、放置するほど後から修正するコストが高くなる。
よくある質問
Q. 2026年のマンション標準管理規約改正は、既存の規約に自動的に適用されますか?
標準管理規約はひな形であり、既存の管理規約が自動的に書き換わることはない。ただし、改正区分所有法の規定(特別決議要件の変更など)は法律として直接適用されるため、規約と法律の間に矛盾が生じている部分については、法律の規定が優先される。既存規約の内容が法律と食い違っていないかを確認し、必要な箇所を総会決議で改正することが求められる。
Q. 管理規約の改正に必要な総会の賛成割合はどれくらいですか?
管理規約の改正には特別決議が必要で、区分所有法31条に基づき区分所有者数および議決権の各3/4以上の賛成が求められる(執筆時点での規定。改正区分所有法の施行内容は公式で確認されたい)。一方、使用細則の改定は普通決議(過半数)で対応できるため、防犯カメラの運用ルールや喫煙細則など実務的なルールは使用細則で定めることで、手続きのハードルを下げることができる。
Q. 規約改正をしないまま大規模修繕を実施しても問題ありませんか?
工事自体を進めることは可能だが、特別決議の有効性への異議申し立て、金融機関の審査での懸念、所在不明所有者への対応根拠の欠如など、具体的な場面で支障が出るリスクがある。特に修繕積立金の取り崩しや一時金徴収が伴う大規模修繕では、規約の手続き規定が整っていないと、後から決議の正当性を問われる可能性がある。
Q. 修繕積立金の積立方式を変えるには、どんな手続きが必要ですか?
積立額の変更は総会の普通決議で対応できる場合が多いが、規約本体に積立方式や額が固定値で記載されている場合は、規約改正(特別決議)が必要になる。まず自分たちの規約の記載内容を確認し、変更に必要な決議の種類を判断することが先決だ。段階増額方式から均等積立方式への移行を検討する場合は、長期修繕計画の見直しとセットで進めることで、必要額の根拠を組合員に示しやすくなる。
Q. 2026年改正で「所在不明者を分母から除外できる」とはどういう意味ですか?
従来の特別決議では、連絡がとれない所有者も分母(議決権の総数)に含まれていたため、長年連絡不能な所有者が多いマンションでは必要な賛成数を集めにくい状況があった。2026年改正では、一定期間連絡がとれない所有者について、裁判所の認定を経ることで分母から除外できる仕組みが整備された。これにより、老朽化マンションの建替え決議や大規模修繕の特別決議が現実的に進めやすくなる。ただし裁判所への申立て手続きが必要なため、弁護士等の専門家への相談が前提になる。
本記事はAI支援のもと編集部が作成 ・ 校閲しています 。
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最終更新 : 2026.09.11



